cametekの日記

かめりあの日記です。 http://cametek.jp/ http://twitter.com/cametek/

スーパーマリオオデッセイ 最少キャプチャー数RTA(Minimum Capture Any%)について

(追記 07/12)

WRが先程更新されました。

これまでの「最少キャプチャー数RTA(Minimum Capture Any%)」史上最速となる1:13:49です。この記事内で解説していますが、後述の「10Captures最速」ですらありません。1つテクニックが少ないため、より簡単だった過去の13Capturesのレギュレーションも含め、最少キャプチャーというレギュレーションの中で(Nut Jumpを持つランに限ると)これまでで最も速い記録が叩き出されました。意味がわからない。

ランは1:50から始まります。

そして問題のNut Jumpは2:53より始まります。説明するより見た方が早いのですが、全くミスがありません。本人(Smallant1)も「文字通り"完璧"」「過去最速のNut Jumpだった」と相当に喜んでいる様子がわかります。

なおこのNut Jumpは可能なマリオデのバージョンが限られています。後のアップデート(最新版、1.3)ではロード時間の短縮が大幅に入り、Any%(通常の最速クリア)では59分14秒というWRが記録されています。逆算してAny%と14分しか差が無いのも含めて、相当速いという話が伝わるといいんですが。

これは本当に本当に速い…!この3ヶ月で3度もWRを叩き出した努力に感動!

そしてカテゴリーはマジで死んだ可能性があります。これからの記録にも楽しみです。

(追記ここまで) 

この記事を書く動機

5/30の朝、何もURLを貼らず、興奮そのままの空中実況ツイートをしていました。

 

 

 

「自分はよくTwitchのゲーム実況を見ている」というコンテキストを知っている人に限って言えば、Twitchでスーパーマリオオデッセイのカテゴリーを見ることができたとは思うのですが(そしてこのWR*1を叩き出した人は、その時点でカテゴリーの視聴者数トップだったので、なんとか見つけることもできそうです)。このツイートだけでは全く意味が不明だったことに加えて、その時何が起こったのか解説して面白さをわかってもらおうという目論見でこの記事を書いています。

 

スーパーマリオオデッセイ、キャプチャーについて

スーパーマリオオデッセイについて知らない人向けの話です。Wikipediaを見たほうが速いという意見もあります。
Nintendo Switch向けのゲームで、スーパーマリオサンシャインぶりの3Dマリオシリーズです。自分も持っていますが非常に面白い。相当グッと来ました。基本的に難易度は低め・万人向けなのですが所々に手強い箇所があり、自分はアクションが苦手なのも相まって普通に苦戦します。アクションゲーム適正がねえ。なお、ストーリーは(分岐やED後の要素こそあるものの)基本的に一本道です。なので、最少キャプチャー数RTAは自ずとEDまで一直線に進んでいくルートになります。

 

f:id:cametek:20190602233818p:plain

スーパーマリオオデッセイ公式ページより

スーパーマリオ オデッセイ | Nintendo Switch | 任天堂

ゲーム中では、帽子のキャッピーくんをマリオがぶん投げることで空中ジャンプ的な動作が色々増えるほか、スクショ右下の帽子をかぶったクリボーのように帽子をぶつける(被せる?)ことでそのキャラや物を操ることができるようになります。

 

例えばマリオシリーズおなじみのクリボーやワンワン、キラーに加えて、恐竜、サボテンなど色々な物をキャプチャーして道を切り開いていく、そういった力学でスーパーマリオオデッセイは進んでいくんですね。軽いネタバレですが、このキャプチャーという能力を本当に最大限に活かしたエンディングを迎えるので、マジで胸が熱くなります。(選択反転メソッドはスマホ時代に通用するのか?)

特に説明不要な気もするけど最少キャプチャー数RTAとは

 そして最少キャプチャー数RTA(Minimum Capture Any%)では、「キャプチャー」回数を最少にしつつエンディングに到達することをルール(レギュレーション)としたRTAタイムアタックが行われています。もちろん、ゲーム内ではキャプチャーを行わないと進めない点が部分部分で存在しますから、どうにかしてその難所を乗り越えていく事になっています。

 

その日叩き出された記録の凄い所(本題)

こちらがSpeedrun.com*2の最少キャプチャー数RTAランキングです。

https://www.speedrun.com/smoce#Any_Minimum_Captures

まず、この最少キャプチャー数RTAは、長い間13回/14回のキャプチャーを行ってクリアするルートが盛んに行われていました。すでにレギュレーションが分岐しているのが面白い点なんですね!

Nut Jump

このルート分岐は、後述するNut Jumpというテクニックを使うことで、14キャプチャーのルートより1回キャプチャー回数を少なく保ったままクリアする、13キャプチャーのルートが可能であるということによります。
しかしながら、そのNut Jumpというテクニックが異常に難しく、世界に4人しか(Nut Jumpを用いて、あるいは「Nut Jumpを使用することができるプレイヤー」がいないということでもありますね)完走したプレイヤーがいないため、多くの人はNut Jumpを行わないルート、すなわち14キャプチャーのルートを選択せざるを得ない、ということがわかってもらえるかと思います。

カナダのプレイヤー*3Smallant1さんによる、2019年1月の13キャプチャーWR記録動画(クリアまでプレーするのでスーパーマリオオデッセイのネタバレを含みます)。ちなみに自分がツイートした配信でWRを叩き出したのも、WRを叩き出す前のWR記録保持者も、13キャプチャー(難しい方)の現記録保持者もSmallant1さんです。マジで何がNut Jumpに駆り立てるのか…。

ちなみにこの記事で取り上げている記録を現在達成しているのはSmallant1さんのみ、世界唯一かつ世界初の記録のため、自動的にほとんど全ての内容がSmallant1さんに関連した内容になっています。

テクニック自体は8:04あたりから始まります。ステージに配置されているナッツ(木の実)を持ち、投げる→飛び乗ることでジャンプが発動する+自動的に木の実を持つ→投げる→…を繰り返すことで無限にジャンプができるというテクニックです。なんか見た感じ簡単そうだし凄い技じゃん!と思うじゃないですか。本当に難しい。曰く、1/12秒(5F)しか成功する時間がない上、45回それを繰り返さなければならない、そしてそのNut Jumpを使うのがルートのほぼ最終部分、そのためRTAという時間を競うルールではやり直しをするためにほぼ全てのコースを再走しなければならない、というのが非常に難しい理由のようです。

左下の記録時間に注目しながら動画を確認すると分かりますが、1度目の挑戦は1時間近くNut Jumpに挑み諦めてリセット(再走)。2度目の挑戦も1時間近くNut Jumpに挑み諦めてリセット。結局4回目の挑戦の1時間強経過後にNut Jumpに成功しています。これがこのRTA配信時のWRです。なんとなくこのテクニックの難しさがわかってもらえたでしょうか。

 

しかし残念ながら、本記事で叩き出された記録は13キャプチャーではなく、10キャプチャーの記録となります。

 

Broode Skip


2019年5月末、あたらしく「Broode Skip」というテクニックが発見されました。このテクニックは、マリオオデッセイを2人でプレーする事のできるモードを使うことで、「滝の国」(2面)のボス「マダム・ブルード」を飛ばして次の国(3面)に向かうことができる技です。

というのもボス「マダム・ブルード」を倒すためには彼女が飼っている(?)ワンワンをキャプチャーして、彼女にぶつけることが必要になります。3回も。そのため、このボス戦をスキップできれば最少キャプチャー回数そのものが13回→10回になる新ルートが出来上がる、という事でした。そこでこのテクニックが発見されたのですが…。

マリオオデッセイでは、帽子のキャッピーくんを操作することで2人プレーにも対応しています。ジョイコンを2つに分けて、左のジョイコンはマリオ、右のジョイコンはキャッピーくん(帽子)、という様にプレーできるんですね。Broode Skipはその2人プレーを応用し、2Pのキャッピーくんを使って、通常のプレーでは届かないチェックポイントの旗を解禁するというテクニックです。
最も近くの足場から飛び出し、キャッピーくんを投げ上げつつ、移動可能範囲から出てしまわないようにキャッピーくんを操作し、通常届かない足場にキャッピーくんを引っ掛け、最終的に1人プレーモードに戻ってきた上で、その足場上に残っているキャッピーくんがマリオの元に帰ってくる挙動を利用してチェックポイントを解禁、チェックポイント上にワープしてムーンをゲットする、という過程を得ています。難しそうですね。上の動画は1度成功させるために45分を費やしています。また、曰く「昨日の配信では5時間を費やして5回だけ成功した」とのこと。大体1時間くらいかかってしまいそうなほど難しいテクニックだ、というのはなんとなく伝わりますか?

1人で2人プレーを行う必要があるということから(基本的にRTAは1人ですからね)ジョイコンを足でプレーせざるを得なく、また画面外にキャッピーくんを出した上で操作しなければならないので、何が起こっているのかのフィードバックがほとんどない、というのが難しい理由のようです。

テクニックの場所自体はかなり初めのステージなのでやり直し自体は簡単そうですが、例えばルートの後ろの方に難関が組み合わさったりすると、倍難しくなるのは想像がつきますね。はい、10キャプチャーRTAはそういったレギュレーションになりそうだ…と思っていました。実際に上の動画はその時点でのWR(&世界初完走)ですが、Brood Skipに45分、Nut Jumpに30分をそれぞれ費やしています。それぞれ1度の成功のためだけにこれだけ時間がかかるというのがマジで大変そう。*4

 

自分が興奮していた記録

Smallant1の10 Captures for PB/WRをwww.twitch.tvから視聴する

それを踏まえた上で、自分がクソ盛り上がっていたこの記録動画(クリアまでプレーするのでスーパーマリオオデッセイのネタバレを含みます)を紹介しようと思います。
これまでの13キャプチャーの記録は1:15:32です。そして10キャプチャー初完走時の記録は3:15:18と、実に倍以上の時間がかかっています。
実は10キャプチャーでは既に1:33:12というメッチャメチャ速い記録を叩き出しているのですが、それでも13キャプチャーに比べて、2つのテクニックを"揃える"ことに20分近い時間が費やされているのが分かりますね。

この配信は朝から見ていたのですが、1発目の挑戦の後半、Nut Jumpの時点で既にWR+6秒(6秒遅れ)の非常に速いペースをマークします。その後細かいリカバリープレー、プレーベースの短縮の結果、最終的な記録は1:33:01、WR-11秒のNew WR!これが記事冒頭で引用した自分のツイート2つ目までの状況です。配信開始直後の1発目のチャレンジでこのギリギリの熱いラン、盛り上がってしまうのが分かってもらえますでしょうか。そしてそのまま2回目3回目とBrood Skipが揃わず再挑戦を繰り返し、4回目の挑戦(動画2時間21分~)へ…

 

問題のラン

2時間26分頃からBrood Skipが始まりますが、なんと1回目のトライでBrood Skipが揃います。彼的にはFirst try, とは言っていますが、まだその段階ではそこまで盛り上がっていない様子が見えますね。とはいえコメントは1発目の成功ということで非常に盛り上がってます。この時点でWRを3分半まくっており、つまりBrood Skipが3分半早く揃ったということですね。
その後のプレイも見せ場がないわけではないのですが(料理の国のダメージブーストを使ったマグマ越えなど)、Nut Jumpにフォーカスして(3時間28分~)紹介します。

もちろんNut Jumpに時間がかかればWRはまず出ない上、実際に奪われし国の時点では4分しかWRを上回っていません。Nut Jump1発成功するか成功しないかで1時間が簡単に掛かってしまうテクニックということもあり、チャットに対しては「1回目のトライ(で成功するか)?それができたら普通じゃないよ」というように答えてからの挑戦。ちなみに大きな奈落を超えなければならないということもあり、マリオや木の実が落下してしまうことが何度も起こりがち。そのため、マリオや木の実が落ちてしまわない限りは1回目のトライ(First try)、と呼ばれて(呼んで)いるようです。

そしてNut Jumpを開始後2分後、1発目のトライでNut Jumpに成功!チャット欄大湧き。弊職作業中断。
Nut Jumpで乗ったクッパの形の像から足場の上に登るためには、通常キャプチャーが必要なため、一度奈落の方にジャンプをしてから折り返して登る必要があります。もちろん落下すれば即終了です。「緊張してる」「手がマジで震える」「狂ってる」と言って何度か躊躇った末、ついにボス戦へ。「What the heck/crap(どういう事だよ)」「Oh my gosh/god」を繰り返している様子から動揺が伝わると思います。事件です。あまりに早すぎるため、コメント欄では「このレギュレーション(カテゴリー)はもう死んだ(新しい記録は出ない)」と言われる結果に。

その後も大きなミスなく進み、最終的な結果はなんとその日2度目のWR、そして13キャプチャーのWRからでさえわずか3分しか遅れのない剛速の1:18:15!

 

これが冒頭に貼った4ツイートの真相、どうしても説明したかったマリオデの最少キャプチャーRTAの熱い記録でした。さっぱりした。

 

まとめ

発売から2年が経った現在でも、「ギャラクシー」「サンシャイン」「64」同様、スーパーマリオオデッセイのRTAは多くプレーされています。Any%やAUM(All-Unique-Moons、全てのムーンそれぞれを揃えるレギュレーション)など、正統派のRTAは比較的走者が多く、特に脚注のAny%世界初の1時間切りは感動的なRTAです。

しかしながらマリオ64の0StarRTA(ケツワープって聞いたこと見たことありませんか?)や Aボタン禁止TAS(この動画では2時間38分掛けてクリボーボム兵を複製しまくってAボタン回数を2回にまで減らしています)のように、専門性の強い非常に技術的な配信、RTAも多く、知れば知るほど面白くなっていく、スルメ的なRTAも存在しています。

上記の最少キャプチャーRTA、特にSmallant1さんの達成した10キャプチャーレギュレーションは驚異的な記録が出てしまったため、今後多くの人がプレーするかどうかは未知数ですが、この機に配信を作業BGMに見てみるしてみるというのはどうでしょうか。

締切に苦しんでいる方は是非!

*1:World Record, 世界記録

*2:RTA情報や記録をまとめる世界最大のコミュニティサイト

*3:ちなみにカナダではゲーム配信が盛んらしいです。世界で初めてスーパーマリオオデッセイ Any%Run(とにかく最速でマリオデをクリアするレギュレーション)の1時間切りを達成したNicroVedaさんもカナダのプレイヤーさん。

WRがかなり煮詰まっているため、NicroVedaさんは毎日毎日挑戦しては細かいミスでリセット、という賽の河原のような配信をしていて、作業しながら見ていてこれは大変そうだな…と思っていました。普段は割と淡々とプレーしているのですが、世界初1時間切りの動画は喜びを抑え切れないという様子で感動的です。 

 

他にも個人的に仲良くしている音楽ゲームプレイヤーのAzerさんもカナダのプレイヤーさんでした。カナダは凄い!Canada is fantastic!

*4:もっと言えば、週に何度もこのレギュレーションのRTAだけやってたりするのにもかかわらず、これだけ時間がかかっています。